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 江古田のアパート
 プロローグ
 3階の部屋
 奇妙な第一発見者
 名探偵再び
 再会
 遺留品
 二つの証拠
 エピローグ
 「やあ、久条さん。ご協力ありがとうございました」
 江尻が久条の右手を両手で包み込むように握った。
 「いえいえ、ほんのちょっと警察より早く謎が解けただけですよ。そうですよね、武田さん?」
 「も、もちろんですよ。いずれ、警察は犯人を逮捕してました。」
 犯人は外国人だと言い張り、初動捜査を進めていた武田は苦りきった表情で答えた。
 「まあ、なんですな。今回はしかしお礼を言うておきますか。」
 「それでは、今度またゆっくりとご挨拶に行きますので、これから、事情聴取ですからね」

 「おっ、名探偵さまのお帰りよ。」
 換気扇のそばでタバコを吸っていた千尋が、玄関を開ける音に反応して言った。
 「じゃあ、詳しく聞かせてよ」
 好奇心に満ちた瞳を輝かせながら、麗華が言った。
 久条は、丁寧に事件の動機・推移・解決までを話すと、ほぅっと一つため息をついた。
 「ところで、そのエッチなライトってなんすか?」
 健太がお玉をもてあそびながら言った。
 「エチルクロライドだよ。麻酔薬さ。」
 「あのなんだっけな、黒いフィルムと同じようなもんっすか?」
 「黒い・・・ああ、クロロフォルムね。そうそう似たようなものだね」
 「そんなものどこから・・・あ!」
 千尋は声を上げると、明日職場に持って行く小さなクーラーボックスの中を空けた。彼女の職場は近くの大学病院なのだ。
 「やられたわ・・・いつの間に・・・」
 「どうしたの?」
 「明日、職場に持っていくはずの麻酔薬が全部ないのよぉ。久条くん・・・・・・。」
 「い、いやぁ・・・つい・・・あはははは」
 「あはははは、じゃ、ないわよぉ。はあ・・・、ボスに叱られるわ。」
 「大丈夫、大丈夫、江尻警視が病院に連絡を入れてあげると言ってたから・・・」
 「えっ?もう、そういうことは早く言いなさいよ!」
 千尋が久条の頬を両手でひっぱりながら言った。
 「ふぁい・・・すみまふぇん。。ゆるしてくだはい。」
 「それにしても、すごい動機よねぇ」
 真由美が同じ女性の麗華に言った。
 「権力やお金のために殺人を犯すことが多いって思われているけど、それよりも愛情が原因で起こる犯罪の方が多いんだよ。人間にとって愛というのは、論理的な思考を妨げる唯一のものだからね。」
 「でも、そこまで愛されてみたいものだわぁ。」
 「麗華さんは、お酒が恋人でしょうに。」
 「何か言った?」
 「い、いや、別に・・・」
 健太は逃げるように台所へ向かった。
 「そんなことより、小腹空かないっすか?」
 「ええ、何か作ってあげてもいいけど、あなたの恋人をそろそろ返してくれないかしら?」
 「恋人?」
 「右手に持ってるものよ。それがないと、スープ作れないでしょ・・・」
 千尋が健太の持っているお玉を指差して言った。
 「なんなら、グレフル用意してあげようか?」
 久条がみんなを見渡しながら、そう言うと、全員声をそろえた返事が返ってきた。
 「30分も待てません!」

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